羊を丸ごと食べる国々
何かと世界を騒ぎに巻き込む中東諸国、中でもイスラエルはその中心だ。
その民の運命を象徴する動物として、旧約聖書にかかれているのが羊・・・その運命とは。
羊の性質を『優しい』『可愛い』と見ているのは日本人だけで、『純粋で、か弱く、犠牲になり易い』と書かれている。
多くの国では、『だまされ易い=愚か』『従順=無能』と否定的な見方だ。
家畜として飼われる羊は、その毛を刈って使うほか、有史以前から食用にされていた。
中東諸国で肉料理といえば、羊を使ったものを指すくらい一般的で、アラブでは、メッカ巡礼最後の日にあたる“犠牲祭り=イード・アルアド・ハー”には、モスクで祈りを捧げた後、羊を丸ごと料理して振舞うのが習いになっている。
裕福な家や肉屋では、羊を買えない人たちにも料理を分け与え、街中が羊・羊・・・の大賑わい。というのも、いまや過去の話になり、現在の状況では、メッカ巡礼も犠牲祭りも行えそうにない。
さて、カサブランカという街をご存知だろうか。
往年のアメリカ映画《カサブランカ》を、ご覧になった方なら、ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンの素晴らしいシーンと共に、背景の街角や空港などが蘇るだろう。
CASA BLANCA=白い家、北アフリカ最西端・地中海と大西洋にまたがるモロッコ王国最大の都市。この街もアラブ料理の国だ。
ただ、気候に恵まれ無双の穀倉地帯を持つため、19世紀前半~20世紀半ばまでフランスに統治され、フランス料理の影響も受けているので、アラブ料理と言っても、日本人が馴染み易いものが多い。
中で代表的なのが“シシカバブー”、日本風に言えば焼き鳥(羊)・・・白もツクネも焼き鳥と総称しているアレだ。
- シシュリク=親指大に切った羊肉を脂身(または野菜)と交互に長めの金串に刺し、炭火で焼いたもの。
- カバブ=ミンチ肉に玉葱やパセリの微塵切りを混ぜ、ハンバーグのように焼いたもの。
- ブルファフ=モツやレバーの串焼き。
これらを合わせてシシカバブーといっているのだ。
その他に、一般的な羊料理では、野菜と薄塩味で煮込んだ、シチューのような“タジン”。
ミンチ肉に香辛料を混ぜ、ソーセージのように金串を芯にまとめて焼いた“ケタフ”。
骨や筋で取ったスープや、脳ミソのシチューなど、屠殺した羊は、一匹丸ごと余すところ無く使い切る。
中東諸国だけじゃなく、モンゴルやアルゼンチン南部、ニュージーランド、オーストラリアなども羊肉主流国。
日本で羊料理の一番人気はジンギスカンだが、実は、モンゴルや中国奥地・山間地と見ても、ジンギスカンに近い料理は無い。
形からして、むしろオーストラリアのバーベキューに似ている。
北海道で羊を食べ始めた時、焼き易いようにと考えられた鉄鍋が、ジンギスカンの兜に似ているから“ジンギスカン”と呼ばれるようになったと言う説が正しいようだ。
まぁ、開拓者たちの料理として、基本的にはバーベキューと同じだと思う。




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