渋柿も甘柿も“渋”の量は同じ
古代から山野に自生し、それぞれの土地で品種改良が進められてきた。
学名もディオスピロス・カキと、和名のカキがそのまま使われている。
因みに、フランスでは“ル・カキ”と呼ばれるそうだ。
庭先に植えて、自家用の果物としても親しまれている。
柿は北海道を除く本州以南で生育、甘柿より渋柿の方が北限が上だ。
この、柿の渋はタンニン性物質・シブオールを含有するからだが、実は甘柿も渋柿も、シブオールの含有量は同じなのだ。
それなら、何故に甘柿に・・・この種の柿は、熟すとシブオールが消滅したり、唾液に溶けない形に変化したりする。
実の中に胡麻のようなものが沢山入っているような甘柿は、シブオールが胡麻状に固まったものだ。
渋柿の渋は、アルコールや炭酸ガスを噴きつけたり、湯に浸けて不溶性に変えると、渋さを感じずに食べることが出来る。
この作業を「醂(さわ)す」と言うが、醂し柿の方が普通の甘柿より甘さが増す。
甘柿の筆頭は“富有柿”、そして“次郎柿”。
渋柿では“平核無(ひらたねなし)柿”=別名・おけさ柿、庄内柿。
柿はビタミンCの含有量を特筆すべきだ。2個で1日の必要量が摂れる。
ビタミンAも多く、またタンニン質が酔い覚ましに効くと言われる。
日本人は、昔から柿は“水菓子(デザート)”ばかりでなく、料理にもいろいろ使って来た。
正月の『柿なます』は、酒を飲む機会の多い時季には、理に適った古人の知恵料理だ。
ほかにも、江戸時代には『柿けんちん』『柿寄せ』『柿の白和え』『柿の黒衣』『柿ころも』『柿しんじょ』・・・etc、手の込んだ柿料理が数多く作られていたそうだ。
残念ながら、名前は残っているものの、本当の作り方は正確に伝わっていない。
暮れから正月に出回る“干し柿”は、半乾燥のアンポ柿、簾で形を整えた枯露(ころ)柿、串に刺して乾す串柿、吊るし柿、巻き柿、苞(つと)柿、押し柿、紅柿など、いずれも高価。
皮を剥き、吊るし干しして手作りしてみたらどうだろう。
余談だが、江戸時代の備前有田の陶工・酒田柿右衛門は、柿の色の美しさに魅せられ、その紅色を焼き物に出そうと心血を注いだ。
寛永末年についに完成した焼き物は、柿右衛門の銘で世界中に知られ、ヨーロッパの陶磁器にも大きな影響を与えた。
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