« ヌーボーワイン一番乗り | トップページ | “ジャガ芋”のような人間がいい »

2006年11月21日 (火)

川魚の長“鯉”は潔い

そろそろ『寒鯉』が美味しくなる。

一般的な店ではなかなか手に入らないが、デパートなどで册切りをたまに見る。川魚専門店なら頼んでおけば大抵は買えるし、ついでに料理に合わせて下拵えも頼める。

鯉の洗い614_1

  1. 刺身用の册(上身)を薄切り、氷を入れた冷水で身を締める。
  2. 山葵醤油や酢味噌で食べる(紅葉下ろしを添えて、ポン酢で食べるのもいい)。

『海魚の王』は“鯛”。そして『川魚の長』は“鯉”と言われる。

鯉は、海が遠い、山郷では祝儀に使われる尊ばれる川魚だ。Photo_292 神事の儀式の供え物としても欠かせず、『鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものなれば、やんごとなき魚なれ・・・』と兼好法師も誉めて書いている。

いとも潔い魚で、俎上に乗せられると、観念したがごとくビクともしない。

日本料理の伝承を守る旧家、四条家の儀式では、身を清め白装束を纏った料理人が、神前で、注連縄&御幣に囲まれた俎上の鯉を、刀で捌く。

一度、見せていただいたが、生きて運ばれ活き活きしていたはずが、確かに“俎上の鯉”はビクともしなかった。

鯉を尊ぶのは、中国も然り。

中国を貫流する黄河の源は、崑侖山脈の奥にあり、そこから積石山を経て竜門の至るという。

その辺りは、激流と滝が続き、普通の魚はとても先に進めない。

鯉のみが竜門を突破し、やがて竜になる・・・と、名高い『登竜門伝説』が生まれ、これにあやかって、日本では出世を願う“鯉のぼり”になった。

鯉は“洗い”が上品だが、丸ごと筒切りにして味噌仕立てにする“鯉こく”や、醤油で甘辛く煮付けた“甘露煮”なども人気がある。

かなり昔だが、生前の父は、行きつけの料亭が、冬に向かってする恒例の“池さらい”に私を連れて行った。

物凄い数の鯉を、大きな池から小さな池に移すのだが、職人たちに混じって、私も泥んこになり鯉を捕まえた。

その鯉は数日清水に入れておくので、前以て上げておいた鯉が供されたのだろうが、当時は自分が捕まえた鯉を食べているのだと信じていた。

鯉といえば<佐久>が有名だが、かつて、穴場の千葉県東金の『遠藤養鰻場』に、丸ごと食べさせて貰おうと出かけた。

最近は、鰻養殖が主になっているが、もともと川魚が専門だから、見事な鯉を料理してくれた。

脂の乗った鯉の腹の辺りを、厚く筒切りした“甘露煮”は、直径が20センチはある。卵巣がはじけて溢れ出さんばかり。あまりの美味しさにぺロリと片付けた。

“洗い”も、こりこりした歯触りで美味。“鯉こく”もいい出汁でいけた。

さて、この辺で止めておけば良かったのだが、調子に乗って、「食べてみてくださいよ」と言われるままに“鰻重”に手を付けたのは失敗。

どんなに旨い鰻でも、あの大きな“甘露煮”などが詰まった腹に収まるわけが無い。

申し訳なかったが、途中で箸を置く羽目になり、謝って包んで貰った。

これから『寒鯉』が美味しくなる。山郷に鯉料理を求めて出かけてみようかなぁ。

« ヌーボーワイン一番乗り | トップページ | “ジャガ芋”のような人間がいい »