食べられない柑橘“仏手柑”
子供が手をつぼめたような形の実が、仏様の手を彷彿とさせるからと、付いたその名は“仏手柑”。
柑橘類は、ほとんど種名が Citrus' (シトラス)。
よって、柑橘類は総称的に“シトロン”と呼ばれるが、“シトロン”の原型は薬用柑橘群を指し、現在、これに当たるのは、本当のところ唯一“仏手柑”だけなのだ。
インド原産の“仏手柑”は、11月になると色付き始め、正月頃に見頃になる。
活け花や床飾りに使ったり、乾燥させて金粉などを塗って装飾品にしたりするが、まるっきり食用にはならない。
ただし、そのバラやスミレを連想させる、微妙な香気は、嗅ぐ者を陶然とさせる。
柑橘類では、ライムの香りが最も爽やかでいいとされるが、“仏手柑”の香気はまた別物で格別だ。
2月頃までは花屋などに置かれているので、2~3個買って、その形の面白さと馥郁とした香りを、部屋や寝室で存分に楽しみたい。
さて、紅茶にレモン・・・の愛好者も多いだろう。
フランスでは、紅茶を注文して「レモンを」と言っても通じない(日本語だから通じないのではない)。
「シトロン!」と言えば、レモンを持ってくる。
とくにパリでは、レモンはキッパリ「シトロン!」と言わねば通じない。あれだけ料理にうるさい国で、レモンとは元来別の品種のシトロンをレモンと同義に使うとは・・・。
フランス人こそ、シトロンとは食用にならない“仏手柑”のことだと理解すべきだと思うが。
レモンはラテン語で“リモン”、本来の言葉にしてほしい。
さて、クリスマスから正月と、しばらく“仏手柑(シトロン)”の形と香りを楽しんだら、輪切りにして入浴剤代わりにしよう。
茶の湯では、薄切りして水に入れ、それを沸かして茶を立てることもあるそうだ。なんと風流なこと。
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