ズワイガニは格安の雌「セイコ」がお得
例えば福井県や石川県の辺りでは「越前ガ二」。
山陰地方では「松葉ガ二」。
丹後地方では「タイサガ二」と呼ばれる。
秋田地方では何と「タラバガ二」と呼ばれるが、勿論、北洋で獲れるタラバガニ(ヤドカリの一種)とはまるで別物なのだ。
数多い日本産の蟹の中では最大級(伊豆地方の超巨大なタカアシガ二は別格なので除外)で、甲幅15センチ、足を伸ばすと70センチにもなる。
と言っても、これは雄のズワイガニのことで、雌はずっと小さくて雄の約1/4ほど。
雄は見るからに立派なだけに値も張り、ブランド化され地域限定のタグが付くと、現地価格でも市場値は2万円前後。
写真の蟹は、まだ地域がブランド化していないもので、それでも正月中は高値になるそうだが、そろそろ値も落ち着いたからと送ってくださった。
確かに、仄かな甘味と淡白でも奥行きの深い味わいは絶品だが、惜しむべくは卵を抱えていない(頂き物に何を言ってるか)。
その点、雌は小さいけれど、雄に比べて一桁も安い価格(来年は雌でも・・・よろしく)。
甲羅に張り付いた未成熟卵“内子”も、腹側に付いた成熟卵“外子”も、それぞれに濃厚で幻惑的な味わいがある。卵巣の美味を存分に教えてくれるのだ。
以前、輪島に取材に行った時に、何処かの駅で降りて『甲箱のおでん』を食べた。セイコガ二の甲羅のおでんなのだがホント美味しかった。
なのに、たくさんの取材メモ・ノートに記録の後が無い。記憶はあるのに記録が無い・・・何処だったのだろう。
因みに、雌は“セイコ”とか“コウバク”“コウバコ”と呼ばれる。
カニ類は一般的に茹で加減が難しいと言われ、土地の人は「蟹を見て茹で加減を決める」と言うくらい微妙。
また、ゆでた後も、あまり包丁や鋏を入れると味が落ちる。だから塩茹でしたら手掴みで野暮に食べるのが一番美味しいのだ。
蟹の足身は、酢の物、蟹すき、蟹しゃぶ、刺身、網焼き・・・解し身は甲羅焼き、甲羅揚げ、蟹飯・・・和・洋・中華と幅広く使われる。
蟹脚肉の天婦羅も美味しいものだ(→)。
余談だが、手掴みで蟹を食べたあとの指は、菊の葉で拭うと匂いが消えてサッパリ・・・品のいい古人の知恵、試す価値あり。
なお、ズワイガニに似て、もっと赤味が強く、足の表・裏ともに赤いのは“紅ズワイガニ”と言い、冷凍で安く出回っているが、味は落ちると思ってほしい。
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