甘い帆立貝柱
帆立貝の漁獲は、7月から本番に入る。
いつも美味しい物を送ってくれる、親友J子さんの息子嫁さんの実家が、陸奥湾の大きな帆立養殖業家なのだ。
直径15セン以上(4~5年物)の帆立を送って頂いた。
帆立の産卵は、春先なので、早いうちの帆立は生殖巣がペタンコで、身(貝柱)も痩せている。
初夏になると、そろそろ身も味も充実してくる。
漢名では『海扇』と呼ばれ、日本でも『扇貝』と言う美称もある。
西洋料理では、“サン・ジャック(太陽乗っ取り?)”・・・。
かつて、銀座《資生堂パーラー》の、レストラン【ロウジエ】料理長だった、フランスの勲章シェフ、ジャック・ボリー氏も「HOTATEは、MUTUWANNね」と言った。
気を良くして、「陸奥湾のサン・ジャックは大きいでしょ」と、フランス語訛り(?)の日本語で応えてから、何度か通勤途中に地下鉄・四谷駅で会って、銀座までご一緒したりして、すっかり意気投合した(と、私は勝手に思っている)。
つまり、フランス料理のシェフにとっても、いい素材だったのだ。
そして、私の主催した食事会のために作ってくれた《帆立貝のムース》がこれ。
陸奥湾帆立の、貝柱の大きさと甘さを活かしたフランス料理。
こんなお洒落な料理は家庭の惣菜料理では無理だが、いつかは正月料理にでも挑戦してみたいと思い続けている。
帆立については、日本の古書『和漢三才図』には、「平らな方の殻を帆にして海上を走る」とある。
平らな方・・・つまり、赤茶色の方の殻が帆になるのだ。
ただ、実際には、海上は走らず、二本の噴射口から水を噴出し、その反動で海底を1~2メートルくらい吹っ飛ぶ。一晩で500メートルは移動するらしい。
波の静かな内湾の推進15~30メートルくらいの砂地に半ば埋もれるように棲息。
成長すると、殻は径・20センチ、貝の厚さは4センチにもなる。通常は25本の放射筋が見られるはずだ。
貝柱が立派なので、貝柱の料理が知られる。
優しい甘味を活かした刺身、酢の物、吸い物、揚げ物、旨煮、バター焼き、コキーュ、など・・・etc。
貝柱を塩茹でして乾燥したものは、中国では“乾貝(かんぺい)”と呼ばれ、料理の素材・出汁として欠かせない。
この乾し貝柱を水で戻し、身を崩して、油揚げや人参など加え、薄口醤油で調味、戻し汁で炊いた炊き込み飯は絶品。
帆立貝は、その柱が大きいのが特徴で、立派な柱は独特の甘味があり、刺身にするとその甘味が活きる。
甘味・旨味の成分、アミノ酸やグルタミン酸が豊富で、本当に甘味と旨味の宝庫といってもいい柱は、嫌いと言う人が居ないほど広く人気がある。
刺身はもちろん、酢の物、天婦羅、フライ、コキーユ・・・和・洋・中華と、どう料理しても合う。
ところで、料理素材としては、一般的ではない内臓も、これまた捨てがたい珍味。
紐は歯応えが身上、ぶつ切りして山葵醤油で食べるのが合うが、甘辛い煮つけも、刻んで掻き揚げも、マリネやサラダもイケる。
これから充実してくる生殖巣も使い途いろいろ。
赤いのは雌の卵巣、白いのは雄の精巣。煮付け、焼き物、空揚げ・・・ちょっと人に教えたくない美味しい一品になる。
- 帆立は、いったん殻から外し、生殖巣と紐以外の、黒い肝などを取る。
- 白い方の殻が深いので、それに入れてオーブンに。
- 片面が焼けたら、引っくり返して、醤油&酒(半々)を垂らして焼く。
- 柑橘汁、または七味など掛けて食べる。
※貝柱以外にも、料亭並みの一品が出来る。
(1) 柱や生殖巣を茹でて裏漉し、出汁&卵で茶碗蒸し。
(2) 同様に裏漉した物を下ろした山芋と混ぜ、片栗粉少々で繋いで丸めて揚げる(または蒸す)。
(3) 柱や紐はグラタンも喜ばれる。
春先から殻付きで出回るが、卵巣や精巣が大きくなって、身も肥る初夏がいい。





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