マダコのニンニク炒め
さて、梅雨時に美味しいのは、まずは鰯。
「入梅鰯」と言って、一番脂の乗った美味しい時季だが、つい先日書いたばかり(記事下の《ば~ばの食べ物事典》から参照を)。
これから、日に日に美味しくなるのは、真蛸(まだこ)もそうだ。
そのマダコは日本では、明石が有名。
夏至から11日目を“半夏生(はんげしょう)”というが、この日は「タコの日」とも言われる。
それくらい、この時期のタコが美味しいということだ。
さて「麦わら蛸(たこ)に祭り鱧(はも)」と言う諺をご存知だろうか。
夏、麦の穂が出揃う頃に美味しくなる蛸、田仕事が一段落し盆祭りの頃美味しくなる鱧。どちらも旬のご馳走だ。
土用蛸は、親にも食わすな なんて諺があるほどだ。
とくに春から夏に産卵する真蛸は、いまが一番美味しい。
たこつぼや はかなき夢を 夏の月 (芭蕉)
欧米人は蛸を悪魔の魚(devil fish)と呼んで毛嫌いする。
同じヨーロッパでも、地中海沿岸のスペインやイタリア、ギリシャでは食べられているが、それでも日本人の蛸好きには敵わないだろう。
日本人は、蛸を悪魔どころか、ユーモラスで愛嬌のある生物として、親しみを持って扱っている。
もちろん、時には“タコ入道”と呼ばれて、怪物扱いされる巨大なのもあるが、どちらかと言うと愛されている。
“蛸の八っさん”など、蛸好き日本人ならではのイメージだ。
その“蛸の八っさん”は、軟体動物・頭足綱八腕目に属す・・・と言うことは、蛸の足だと思っていたのは全部手だったのか?。
八本足の蛸は、八本手の蛸だった・・・。こんな小話もある。
蛸が海辺で昼寝をしていた。
猫が来て、蛸の足を食べ始めたが、蛸は目を覚まさない。
7本食べられて、やっと気が付いた蛸は、慌てて海中に逃げた。
悔しいから、仕返しに、猫を溺れさせようと、残った1本で“オイデ・オイデ”をした。
すると猫は「その手は食わない」と、せせら笑った。
となると、蛸は、足が7本で手が1本・・・か?。
数の話は置いといて、蛸の足は再生力が強く、食いちぎられても、いずれ回復する。
日本近海に40種以上棲息する蛸の中でも、一番馴染み深いのは、茹でると赤くなる真蛸だろう。北海道の水蛸は、大物になると全長3メートルにもおよび、茹でても赤くならない。
海底に沈めた蛸壺に潜り込んだ蛸は、そこから出ようとせず安住の住処とばかりジッとしている。
それを手繰り上げる漁法は知られているが、潜ってヤスで突いたり、釣り鈎で引っ掛けて獲る方法もある。
古い時代に、蛸は“タルコ”と呼ばれたが、タル=足る(腹が膨れている)、またはタル=樽・壷で丸い。そしてコは骨が無く柔らかいもの・・・ナマコのコもそうだ。
江戸時代の文献には“多股(たこ)”とあり・・・となると、8本全部が足か?。
英名の“Octopus(オクトパス)”も、オクト(8)+パス(足)=八本足のことだ。
タコの漢字・蛸の本来の意味は、足が細長い蜘蛛のこと。
海中では蜘蛛のように見えたのだろう。
日本で獲れる蛸の種類は約50種、中で食用にされる主なものは、マダコ、ミズダコ、テナガダコ、イイダコなど。
蛸好きの日本人は、年間に約15万トン以上も蛸を食べるが、そのうち2/3は輸入物だ。
最近は、市場に出回っている真蛸の大半が、アフリカ東海岸・モーリタニア辺りで、機船底引き網で取ったものだ。
しかし、瀬戸内海で、昔ながらの漁法で上げたものが、何と言っても美味。
丸ごと買うのは大変だ、切り分けてあるものを使い切る方がいい。
茹で蛸は、皮がしっかり付いている、色もケバケバしくない自然なものを選ぶこと。
江戸時代から、「オナゴの好きな、芋・蛸・南瓜(カボチャ)・蒟蒻・芝居」と謂われるが、女性に限らず“タコ・ファン”は多い。
蛸に多く含まれるアミノ酸の一種・タウリンは、コレステロールを下げ、血圧を正常にし、肝臓の機能を高めるといわれる。
刺身、酢の物、煮物、唐揚げ、寿司種などにするが、とくに“桜煮”は美味しい。
米粒のような卵は『海藤花』と呼び、高級な吸い物種だ。塩漬けで保存もされる。
明石の辺りで、スルメのように干されている『干しダコ』もユニーク。
じっくり煮込んだ蛸は、味が染みて美味しく、おでん種人気がある。
おでん屋の屋号に“蛸○”とか“○蛸”(多幸と当て字の場合も)が多いのも、そのせいだ。
- 茹でタコ(足・小2本)は、食べ易い大きさに切る。
- オリーブ油(80cc)に、おろしニンニク、レモン絞り汁、パセリ微塵切りをそれぞれ少々、塩・胡椒各一つまみで、和えタレを作る。
- 1を2で和えるだけの簡単さ。
※市販の茹で蛸を、ドレッシングで和えるだけなのに、プロの味・・・レストランの味。
《ば~ばの食べ物事典》を作りました。ご参考になれば幸甚。
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