土用食に長芋と湯引きビーフ
土用に食べるといい、そう言われる食品は多い。
“う”の付く物だけではなく、長い物やネバネバ物などもそうだ。
独特の粘りが特徴の“長芋”は消化を助けるので、肉と一緒に使うのもいい。
山野に自生する多年生蔓草の山の芋は、とくに“自然薯(じねんじょ)”と呼ばれ、極めて貴重品。なぜなら、昨今では天然物は滅多に入手出来ないのだ。
店頭にあるのは、どれもが改良された栽培品。
真直ぐで肉質が白い“長芋”は、水分が多い分、一番粘り方も薄い。千切りをして揉み海苔をかけて食べたり、サラダ、酢の物にするのが合う。
扇を開いたような形の“扇子芋”と、それを少し小形にした“銀杏(いちょう)芋”。
仏手柑のような掌形の“大和芋”は、粘り気を利用して、とろろや掻き揚げに。
ヒネ生姜のような形の“仏掌(つくね)芋”は、擂鉢で摺ってとろろにすると一番粘って美味しい。
山芋は、日本や中国が原産の山芋科の山の芋。
強い粘りが、強壮効果があると、昔からスタミナ食と言われてきた。
わが国・最古の医術書『医心方』に、「腰痛をとめて、五臓を充実させる。長く食べていると、耳や眼がさとく明るくなり、身体が軽く、飢えに対しても抵抗力がついて、寿命が延びる」と、万々歳の記述がある。
山に自生するものを“山薬”、畑に栽培したものを“家山薬”と、呼んでいたほど薬効が信じられていのだ。
江戸時代の『和歌食物本草』にも、「とろろ汁 折々少し 食すれば 脾腎のくすり 気虚をおぎなう」とある。
山芋は、炭水化物が主成分で、粘り気の基は、グロブリン様蛋白質とマンナンが結合したもの。
また、『とろろ飯』のご飯は、麦飯が合うが、麦飯自体は消化がいいとは言えないもの。
その麦飯にとろろをかけて、ろくに噛まずに飲み込むように掻き込んでも大丈夫なのは、山芋には消化酵素ジアスターゼが含まれるから。
そのジアスターゼ含有量は、大根の数倍と言われ、消化を促進する。
ただ、消化酵素は熱に弱いので、とろろは生に限る。
土用に“う”の付く牛(肉)と、ネバネバの長芋で猛暑を乗り切る体力作り。
- ステーキ用牛肉(150~200gくらい)は、熱湯に1~2分通し、氷水に取って冷し、水気を良く拭いて薄く切る。
- 長芋(4~5センチ長さ)は、皮を剥いて酢水に浸け、水気を拭いて拍子木切り。
- 貝割菜(適宜)は根を切って、5センチに切る。
- 皿に、1&2&3を盛り合わせ、山葵を添えて、醤油で食べる。
※ローストビーフや牛肉タタキのように、湯引きでも中が生の美味しさを残しながら、臭みが取れる。
暑い日は、こうした冷たい肉が食を進めるが、長芋などと一緒に摂ることで消化にいい。
《ば~ばの食べ物事典》を作りました。ご参考になれば幸甚。
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