高根(高値)になった“泥鰌(どじょう)”
今日は“土用の入り”。
土用には長いもの、ネバネバもの、「う」の付くもの・・・などなど、“土用○○”なる土用食品が目白押し。
中で、“泥鰌(どじょう)”も人気の一つだったが、昨今は泥鰌の減少で、高値傾向。
庶民の楽しみ「どじょう鍋」も高根の花になるつつある。
暑い日に、フ~フ~言いながら“どじょう鍋”を食べる。
たくさん汗をかいた後の爽快感、暑気払いには最高だ。
口の周りに五対十本のヒゲがある泥鰌(どじょう)は、泥に潜る習慣がある。
冬場は泥の中で冬眠しているが、春になって水温が緩むと活動を始める。
そして、産卵期を迎える夏場が美味しい時季だ。
特に腹に卵をもった泥鰌は美味。
大きいは 亭主にゆずる どじょう汁
鰻に劣らない滋養豊富さで、しかも安価だと江戸時代には庶民に好まれた。
本来は、泥鰌は川や湖、沼などの水が濁って底が泥質の、水温が高めのところに棲息する。
かつては、水田にもいたから、馴染み深い川魚だったのだ。
水面から口を突き出し、空気を吸うと水底に沈む。
飲み込んだ空気は、腸で呼吸され、肛門から気泡となって排出される。
つまり、泥鰌は腸呼吸をするので、独特の上下運動をするが、その動きから俗に“踊り子”とも呼ばれる。
また腸呼吸ゆえに、水から出てもしばらくは生きていける。
棲息する沼や池から逃げ出すのもわけなく出来るのだ。
料理する時は、1~2日真水に泳がせて泥を充分に吐かせる。泥臭さを抜くためには欠かせないこと。
この店では、泥を吐かせてから、さらに生きているうちに酒に放ち、味に深みを持たせると言う。
多少、味に癖があるので牛蒡や葱との相性がいい。
時期的にはちょうど新牛蒡の出回る季節なので、新牛蒡の爽やかな香りを活かした“柳川鍋”が美味しい。
この柳川鍋や唐揚げ用の泥鰌は割いて使う。
かの魯山人さえ、江戸の職人技に感嘆している。
「(関西より)東京の職人のほうが鰻割きは一日の長があって、断然うまいね・・・・・・(中略)
・・・・・鰻割きより難しいのが、泥鰌割きだ。
素人は泥鰌のほうがやさしいと思っているが、泥鰌には細かい肋骨みたいなのがたくさんある。
あれを、肉のほうに残さず、と言って、骨ほうに肉を付けずに、具合良く割くということが、なかなか容易じゃない。
俺も、ずいぶんやってみたが、うまくいかんもんだ」『酔余随談(平野雅章)』より。
私は、何と言っても、泥鰌を丸ごと煮て葱で食べる“どぜう鍋”。
丸ごと使うマル、頭と骨を取ったヌキ、どちらにしても暑さは吹っ飛ぶ。
味噌が味を引き立てる味噌汁、蒲焼、空揚げ・・・食わず嫌いの人も、一度食べてみれば、案外納得の旨さが分かるはず。
因みに、『駒方どぜう』が何故《どぜう》なのか・・・ドジョウだと四文字=四=死で縁起が悪い・・・と言うことかららしい。
今日は久々に、浅草まで足を運んだが、この数年は渋谷の支店に行くことが多い。
夏の暑い日、ここでたっぷり汗をかいて“どぜう鍋”と“柳川鍋”を食べる。
つかの間、江戸っ子になって、粋になった気がする。
《ば~ばの食べ物事典》を作りました。ご参考になれば幸甚。
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