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2007年10月24日 (水)

石榴(ざくろ)の思い出

塀越しに、大きな石榴の木が見えるお宅がある。

先ほど散歩で通りかかったら、「ご自由にお持ちください」と札を立てて、石榴の実が入った笊が置いてあった。

そこを通る度に、大きな実に見とれてはいたが、笊にはすでに2個しか残っていない。

2個とも頂きたかったが、私と同じように、この実を見上げていた人が居たかも知れない。

1123 そう思って、1個だけ頂き、奥に向かって頭を下げてポケットに入れた。

この実の由来は、紀元前114年以前に前漢国の外交官として活躍した張騫(ちょうけん)が、西方から持ち帰った・・・その西方の国が《安石国》。

瘤のような実が生る木があって、その実を持ち帰ったので“安石榴(あんせきりゅう)”と名づけた。

それが詰まって“石榴”になり、それが今に至っている。

原産は、ペルシャ(イラン)を中心にした地域で、学名はプニカ・グラナトゥム。

グラナトゥムは粒状の意で、まさに石榴の実・・・スペイン語ではグラナダ。

アルハンブラ宮殿のある、あのグラナダ市は、3個組み合わせた石榴の実が市の紋章になっている。

宮殿の庭園はもとより、街中至るところに石榴の木が植えられている街・・・「あぁ、グラナダなんだなぁ」と感慨深くなる風情溢れる街だ。

秋が深まり、果物店の奥に、大きな石榴が並べられると、私には忘れられない貴重な思い出が蘇る。

石榴の実は、甘くほのかに酸っぱく、香りがいいのだが食べ難い。

1124好きな人は「種ごと食べちゃえばいいんだよ」と、こともなげに言うが、私はクチュクチュと汁を啜った後の、口中に残った種は飲み込めず出していた。

ある日、評論家の故・古波蔵保好先生のお宅で、真っ赤な芳香のあるジュースを頂いた。

「あ、石榴?」「よく分かったね、石榴を絞ったんだよ」

「先生が?」「そう、僕が・・・美味しい物を頂くためにはマメなんですよ」

先生が教えてくださった作りかたは、手で四つくらいに割った石榴から、潰さないように赤いルビーのような粒を取り出す。

それをボウルに入れて、小さな擂粉木のような棒で、丁寧にゆっくり潰していく。

溜まった汁を濾し器に通し、残ったかすは布巾で絞って、ジュースが完成・・・と。

ワインより美しい、宝石のような色のジュースは、甘さも濃厚で、かすかな酸味が爽やか、独特の香りは夢心地にさせる魅力がある。

「潰す時に、白いシャツは危険なんですよ(汁が撥ねるから)」

先生は笑って、大きなコップになみなみとその貴重なジュースをご馳走してくださった。

1個の石榴から出来るジュースは微量だろう。

そのコップには何個分の石榴が、面倒な作業を経て、ジュースになって入れられたのか。

日本一ダンディな文化人と、誰しもが認める先生は、奥様も著名なデザイナーだったこともあろうか、お洒落な老紳士(憧れていたんだ~私)。

その先生が手ずから、一粒一粒を外し潰し濾された“グラナディン(石榴)・ジュース”、この上ないもてなしを頂いたと体中に染みた。1127

お子様がいらっしゃらない先生は、私の亡き父と同い年。

それを知った先生にも、奥様にも可愛がっていただいて、何度もお食事にお供したのに、この《グラナディン・ジュース》が、何より心に残っている。

《ば~ばの食べ物事典》を作りました。ご参考になれば幸甚。

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